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【ホンネ会議#33】なぜ政治にお金がかかるのか?地方選出議員の現実から見た公明党連立離脱の深層


この記事は、Spotifyビデオポッドキャスト「川崎ひでとのホンネ会議」をAIで要約したものです。


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こんにちは。衆議院議員の川崎 ひでとです。『ホンネ会議』へようこそ。


2025年10月10日、金曜日。永田町に衝撃的なニュースが駆け巡りました。

「公明党、連立離脱」。この日、自民党の高市早苗新総裁と公明党の斉藤鉄夫代表が会談し、20年以上にわたる連立政権の歴史に、一つの区切りが打たれることとなりました。



私の父の代から、そして自身の選挙に至るまで、公明党の皆様とは常に手を取り合って戦ってきました。特に、公明党三重県本部の代表である中川康洋衆議院議員とは、個人的にもお酒を酌み交わすほどの関係です。

長年の信頼関係が、ニュース速報ひとつでこうもあっさりと終わってしまうのかと思うと、非常に残念で、寂しい思いがこみ上げます。この連立が解消されたとしても、三重県二区という現場レベルでの連携だけは、これからも続けていきたい。それが偽らざるホンネです。


では、一体何が両党の溝を分ける決定的な要因となったのでしょうか。報道されているのは「企業献金のあり方」を巡る対立です。しかし、この問題を正しく理解するためには、まずその大前提である「なぜ政治に金がかかるのか」という、あまり語られない現実についてお話しなければなりません。


政治家の「カネ」問題―その知られざる構造


「政治家はカネがかかる」と聞くと、利権や贅沢を想像する方がいるかもしれません。しかし、現実は全く異なります。特に、私のように地方の広大な選挙区を持つ議員にとって、政治活動の維持には、どうしてもコストがかかるのです。

私の選挙区は三重県にありますが、5つの市にまたがる、県を横に長く分断したような広大なエリアです。これは地方では珍しいことではありません。「一票の格差」是正のため、有権者人口に合わせて議員定数が決まる結果、人口の少ない地方では、一人の国会議員がとてつもなく広い地域を担当することになるので。


国会議員の本来の仕事は、選挙区の皆様が抱える悩みや課題の声を一つひとつお聞きし、その解決のために働くことです。

しかし、私は平日のほとんどを東京の国会で過ごさなければなりません。その間、広大な選挙区の各地を回り、皆様の声に耳を傾けるのは誰か。それは、各地域に配置した秘書の皆さんです。


5つの市で活動するためには、それぞれの地域に事務所を構え、最低でも2人以上のスタッフ(秘書や事務員)を配置する必要があります。当然、事務所の家賃や光熱費、スタッフの人件費、そして車社会である地方を駆け回るためのガソリン代など、基礎的な経費が膨大にかかります。


では、これらの費用を国会議員の給料や国から支給される政党交付金で賄えるのでしょうか?答えは「全くもって賄えない」です。これが、今の政治が抱える構造的な実情です。だからこそ、私たちは政治資金パーティーを開いたり、あるいは企業や個人の皆様から献金をいただいたりして、皆様の声を聞くための体制を必死で維持しているのです。



企業献金は本当に「悪」なのか?―透明性という観点


その上で、今回の争点となった「企業献金」についてです。公明党は企業献金の規制強化を主張されていますが、私はここに大きな疑問を感じています。なぜなら、数ある政治資金の中で、企業献金は最も透明性が高い仕組みだからです。


企業献金や個人献金といった「献金」は、法律により、たとえ1円であっても、そのすべてを政治資金収支報告書に記載する義務があります。いつ、どこの誰から、いくらいただいたのかを明記し、総務省に提出された報告書は、国民の誰もが閲覧できる形で公開されます。お金を出す企業側にも当然、帳簿が存在しますから、受け取る側と出す側の記録を照合すれば、ごまかしのきかない、極めてクリーンな資金の流れが担保されているのです。



現場を知らない「改革案」が招く新たなリスク


公明党の案は、企業献金の窓口を自民党本部や都道府県連に一本化するというものです。一見、管理がしやすくなり、透明性が高まるように見えるかもしれません。しかし、かつて秘書として政治資金の事務処理を実際に担当してきた私の目から見ると、これはむしろ、新たなミスを誘発する可能性があります。


政治資金の管理は、今もなお、人の手によるアナログな作業(紙への記入やエクセル入力)に頼っています。そのため、ヒューマンエラーが非常に起こりやすい。実は、過去に問題となった「不記載」の大多数は、悪意ある隠蔽ではなく、こうした事務所の単純な記載ミスや桁間違いなのです。


この極めてエラーが起きやすい現状において、これまで各議員の事務所に献金してくれていた企業が、その窓口をすべて都道府県連に集中させたらどうなるでしょうか。事務スタッフの作業量は爆発的に増加します。どの県連も、非常に少ない人数で膨大な事務を回しているのが実情です。過剰な業務負担は、必ずやヒューマンエラーの頻発につながります。



本当に必要な改革とは何か


では、どうすればいいのか。そもそも透明性が高い企業献金のあり方を規制するのではなく、その運用で起こりがちなヒューマンエラーを、仕組みによっていかに防ぐかを考えるべきです。


具体的な解決策は、例えば「現金の受け渡しを原則禁止し、すべて銀行振込にする」ことです。振込であれば、日時や金額が正確に記録され、改ざんの余地はありません。さらに、限られた人員でどうやってダブルチェックの体制を構築していくか。ここにこそ、ITシステムを導入するなど、現代的なアプローチが必要なのです。


最も危惧すべきは、実際に事務所の事務処理をやったことがない政治家たちが、現場の実態を知らないままルール作りを進めてしまうことです。それは、ただ現場の負担を増やし、新たな混乱を生むだけの結果に終わるでしょう。



追伸:高市総裁の「持ち帰り」は正しい判断だった


最後に、この日の高市総裁の対応について触れておきます。総裁の記者会見の記録によれば、公明党から企業献金に関する党の賛否を示すよう求められた際、高市総裁は「総裁と幹事長の2人だけで判断できるものではなく、党内に持ち帰って協議したい」と伝えた、とあります。しかし、公明党側はこれを「具体的な回答にならない」として、連立離脱の意向を伝えたとのことです。


私は、この高市総裁の対応は、党のリーダーとして100%正しかったと信じます。自民党という組織の責任ある政治を示すためには、トップの独断で結論を出すのではなく、党内の手続きをきちんと踏み、多くの議員の意見を集約して答えを出すべきです。その姿勢は、自民党の仲間たちを大切に思っていることの何よりの証左ではないでしょうか。熟慮の時間を許さなかった今回の決断は、残念でなりません。


この連立解消を乗り越え、私たちは自民党の再生に向けて、より一層、足元を見つめ直さなければならない。今、その決意を新たにしています。

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