セルビア科学・技術開発・イノベーション省グニャトビッチ副大臣との会談 − AI分野における協力深化に向けて
- HIDETO KAWASAKI
- 6月28日
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先日、総務省にセルビア共和国の科学・技術開発・イノベーション省からグニャトビッチ副大臣が来訪され、今後の両国の協力について非常に有意義な会談を行いました。
会談では、AI(人工知能)分野における国際的な連携から、各国の具体的な取り組みまで、多岐にわたるテーマで意見交換をさせていただきました。
GPAIにおける連携と各国のAI戦略
会談の冒頭、GPAIについて議論しました。
GPAIとは、Global Partnership on Artificial Intelligence(AIに関するグローバルパートナーシップ)の略で、人間中心の考え方に基づき、「責任あるAI」の開発・利用を推進するための国際的な官民連携組織です。
2020年に設立され、現在は29カ国が参加しています。
この枠組みのもと、本年5月に東京で開催されたワークショップは、セルビアのご尽力もあり、40カ国から150名もの参加者を得て成功裏に終わりました。グニャトビッチ副大臣からも、この成功への謝意が述べられました。
副大臣からは、セルビアが国を挙げてAI技術の育成と実践に長年投資しており、すでに政府レベルで国家戦略を採択し、現在その実践のための法整備を進めているとのお話を伺いました。特に、バイオテクノロジー、バイオ医療、スマート農業といった分野でのAI活用に重点を置いている点は、非常に示唆に富むものでした。
私からは、日本で今国会で成立した「AI新法」について説明させていただきました。これは、EUの規制的なアプローチとは異なり、「イノベーションの促進」と「適切な規制(レギュレーション)」のバランスを重視する、日本独自の考え方に基づくものです。AIの発展を後押ししつつ、リスクに対応していくという我々の姿勢に、副大臣も共感を示してくださいました。
未来を担う「AI人材」の育成

AI社会の基盤となる「人材育成」は、両国共通の重要な課題です。この点について、セルビアの先進的な取り組みには大変感銘を受けました。
セルビアでは既に小学校1年生から「デジタルの世界」という科目が必修化されているそうです。幼少期からデジタル技術に触れる機会を設けることで、次代を担う人材を育成しているのです。
さらに、大学においても、IT分野の学生が他分野の学生と交流できる学際的なプログラムを構築したり、研究者の国際的な流動性を高め、他国との情報交換を活発化させるプログラムに取り組んでいるとのことでした。
日本の「オール光ネットワーク」構想とセルビアのBIO4キャンパス
AI技術の社会実装が進む中で、避けて通れないのがエネルギー問題です。私からは、電力消費を大幅に抑制できる日本の「オール光ネットワーク」構想を紹介させていただきました。
これは、計算処理を電気ではなく「光」で行うことで、電力消費を100分の1に抑え、AIの運用効率を飛躍的に高める技術です。この構想が早期に社会実装されれば、教育や医療現場など、社会の隅々でAIの恩恵をより豊かに受けられるようになります。
一方、副大臣からは、セルビアで現在建設が進んでいる欧州最大規模のバイオテクノロジー・バイオ情報学の専門施設「BIO4キャンパス」についてご紹介がありました。このプロジェクトには、武田薬品をはじめとする日本企業も参画しており、希少疾患の治療におけるAI活用などで協力関係が着々と進んでいることを伺い、大変誇らしく思いました。
今回の会談を通じて、セルビアのAI戦略に対する熱意と具体的な取り組みの数々に、大きな刺激を受けました。今後、総務省としても、文部科学省など関係省庁とも連携しながら、セルビアとの協力関係を一層深めてまいりたいと考えております。
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