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伊賀市の福祉現場のリアルな声を聞く

皆さん、こんにちは。


先日、伊賀市社会福祉法人連合会の皆様と、私たちの暮らしに欠かせない「福祉」の未来について語り合う、大変貴重な機会をいただきました。介護、保育、障がい者支援の第一線でご尽力されている方々から伺ったお話は、伊賀市が今まさに直面している課題と、これから私たちが何をすべきかを示唆に富むものでした。


今回のブログでは、その意見交換会で浮き彫りになった課題と、未来への展望についてご報告します。


1. 介護現場の悲鳴:国の基準と市の実態の大きなギャップ


まず大きな議題となったのが、高齢者福祉、特に養護老人ホームの運営費についてです。


令和6年11月22日、厚生労働省は全国の自治体に対し、「養護老人ホーム及び軽費老人ホームの適切な運営に向けた取組の促進について」と題する通知を発出しました


これは、物価高騰などに苦しむ福祉施設の運営費について、各自治体が責任を持って改定を進めるよう強く促す、いわば「国からの強い要請」です。


しかし、今回の意見交換会で「国の交付税基準は平成18年から1.38倍になっているのに、伊賀市の運営費基準は当時のまま」というお話がありました。


そこで厚生労働省が行った全国調査(速報値)によると、衝撃的な実態が明らかになりました 。


  • 7割以上の自治体が、物価高騰などを反映した独自の運営費改定を行っていない

  • 令和6年度の介護報酬改定に合わせた増額についても、約1割の自治体が「対応予定なし」と回答

  • その結果、独立行政法人福祉医療機構の調査では、養護老人ホームや軽費老人ホームの経営状況は悪化しており、特にケアハウス(軽費老人ホーム)は赤字経営に陥っている状況 。


これでは、質の高いサービス提供どころか、施設の存続自体が危ぶまれます。



こうした事態を受け、国は通知の中で「これまで独自の改定を実施していない場合、積極的な対応をお願いする」 と明確に踏み込み、自治体が取るべき具体的な方法まで示しました。

  1. 普通交付税の増加率を反映させる: 前述の通り、国から自治体へ配分されるお金(普通交付税)の計算単価は、平成18年度から令和5年度にかけて増加しています。この増加率を運営費に反映させる方法です 。

  2. 経済指標を参考にする: 消費者物価指数や、公務員の給与改定の基準となる人事院勧告などを参考に引き上げる方法です 。

  3. 過去の介護報酬改定率を参考にする: これまでの介護報酬の改定率を参考に引き上げる方法も示されています 。



実際に、

奈良県御所市では、この国の考え方に基づき、普通交付税の増加率を参考に運営費(一般事務費等)を1.38倍に引き上げる改定を実施しました 。


伊賀市の福祉現場からの要望と全く同じ水準であり、他の自治体で実現できている以上、伊賀市でできない理由はありません。

物価や光熱費が高騰し続ける中で、これでは質の高いサービスを維持していくことは極めて困難です。


連合会の皆様からは、「数年かかっても良いから、段階的にでも実情に合った単価に改定してほしい」という切実な声が上がりました。



2. 待ったなしの人材不足:介護と保育、地域の土台を揺るがす問題


次に深刻な課題として挙げられたのが、福祉分野全体での人材不足です。


  • 介護分野: 三重県は、介護職の有効求人倍率が全国でも際立って高い状況にあります。団塊の世代が後期高齢者となり、介護を必要とする方々が増えていく中で、支える人材の確保は喫緊の課題です。


  • 保育分野: 介護と同様に、保育士の不足も深刻です。働きたくても子どもの預け先がない、という待機児童の問題は、保育士が足りないために施設の定員を埋められないことも大きな一因となっています。先日、伊賀市が新聞で公立保育士の募集を行ったことが、かえって私立保育園の人材確保を圧迫しているのではないか、という厳しいご指摘もありました。



外国人材の受け入れも進んでいますが、言葉の壁や文化の違いを乗り越え、利用される方々と心を通わせるまでには時間がかかります 。また、地元高校における福祉科も、希望者の減少という課題に直面しており 、地域全体で福祉の担い手を育てていく視点が不可欠です。



3. 制度の壁:現場の実情に合わない処遇改善と生活保護の課題


職員の給与を改善するための「処遇改善加算」という制度があります。しかし、この制度もまた、現場に新たな課題を生んでいます。


介護、保育、障がい者福祉で制度がバラバラなため、複数のサービスを一体的に運営している法人では、職員間で不公平感が生まれたり、事務手続きが非常に煩雑になったりしています 。「加算という形ではなく、誰もが納得できる形で根本的な基本報酬を引き上げてほしい」という声は、まさにその通りだと感じます 。



さらに、障がいを持つ方々の暮らしにも、物価高は深刻な影を落としています。グループホームで生活する方々の家賃は、生活保護の家賃扶助で賄われることが多いのですが、最近の家賃高騰により、扶助額では到底足りず、運営が立ち行かなくなるケースが出てきています。


実際に、伊賀市内のある法人では、やむなく3カ所のグループホームを閉鎖したとのお話もありました。



4.未来への提言:伊賀市が「選ばれるまち」になるために


これらの課題に対し、ただ国の対応を待つだけでは不十分です。意見交換会では、伊賀市が自ら「稼げるまち」となり、福祉を充実させていくための前向きな議論も交わされました。

私の密かなアイデアについては今度またお伝えします。


今回いただいた現場の皆様の貴重なご意見を、私はしっかりと国政の場に届け、制度の改善と予算の確保に全力を尽くしてまいります。そして同時に、伊賀市が持つポテンシャルを最大限に引き出し、誰もが安心して暮らし、働ける「選ばれるまち」になるよう、皆様と共に知恵を絞り、汗を流していく覚悟です。


 
 
 

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