未来の通信を日星協力で築く:NICTとSUTDの連携強化
- HIDETO KAWASAKI
- 5月6日
- 読了時間: 4分
皆様、こんにちは。総務大臣政務官の川崎ひでとです。
この度、情報通信研究機構(NICT)の徳田理事長と共に、シンガポール工科デザイン大学(SUTD)を訪問いたしました。SUTDは、その名の通りテクノロジーとデザイン思考の融合を教育・研究の中核に据える、シンガポールでもユニークで先進的な大学です。
Beyond 5G/6G 時代に向けた協力覚書(MoU)調印式
今回の訪問のハイライトは、NICTとSUTDとの間の協力覚書(MoU)の調印式に立ち会わせていただいたことです。SUTDの情報システム技術デザイン学科長であるトニー・クエック教授をはじめ、両機関の関係者の皆様がご尽力され、この日を迎えられたことに心より敬意を表します。
調印式に先立ち、ご挨拶をさせていただきました。
爆発的に普及が進むAIを支え、将来社会のいわば「神経網」となる次世代情報通信基盤「Beyond 5G / 6G」。この広範な技術領域をカバーする総合的なシステムを社会実装するには、限られたコミュニティだけでなく、オープンなエコシステムの中で、国際的な連携を強化していくことが不可欠です。
特に、重要なパートナーであるシンガポールとの連携は、イノベーション創出の鍵を握ると考えています。
NICTの徳田理事長からは、NICTが情報通信分野における日本唯一の公的研究機関として、基礎研究から社会実装まで一貫して取り組み、特にBeyond 5G/6G、AI、量子情報通信、サイバーセキュリティを戦略領域として推進していること、そしてアジアの6G研究開発をリードするSUTDとの連携が極めて重要である旨、力強いお話がありました。
このMoU締結が、両機関の研究協力、人材交流を一層加速させ、Beyond 5G/6G分野における大きな発展につながることを確信しています。
未来を垣間見るデモンストレーション
調印式の後には、NICTとSUTDの共同研究の成果を示す、非常に興味深いデモンストレーションを拝見しました。
衛星・地上統合ネットワークによるドローン遠隔制御: 日本(NICT本部)からシンガポール(SUTD)にあるドローンを遠隔操作し、通信経路を地上のネットワーク(TN)と衛星通信を模擬したネットワーク(NTN)との間で動的に切り替えるデモでした。山間部や海上など地上網が届きにくい場所では衛星通信を利用し、不要な地上基地局の電力をAIが判断して停止させることで、省エネと通信の安定性を両立させるという、Beyond 5G/6G時代のインテリジェントなネットワーク管理の姿を具体的に示していました。
AI搭載ロボットによる自律監視: 空港などを想定した環境で、ロボットが自律的に巡回監視を行い、AI(エッジAI)が不審物(模擬爆弾)を検知すると自動停止し、人間が遠隔操作で安全に対処するデモです。AIとロボティクスの連携による、より安全で効率的な社会インフラ監視の可能性を感じました。
オープンRAN(O-RAN)が拓く可能性
これらのデモンストレーションの背景にある重要な技術思想が「オープンRAN(O-RAN)」です。従来の単一ベンダーによる囲い込み型(ブラックボックス型)のシステムでは難しかった、異なるシステム(地上網と衛星網)やベンダーの機器、AIなどの新しいアプリケーションを柔軟に組み合わせることが、オープン化されたインターフェースと仕様を持つO-RANによって可能になります。
このオープンな環境こそが、多様なプレイヤーの参入を促し、今回見たような革新的なサービスやアプリケーションを生み出す土壌となるのです。日本としても、このO-RANの流れを積極的に推進し、国際的な標準化活動にも貢献していく必要性を改めて認識しました。
結びに
今回のSUTD訪問とMoU調印式は、Beyond 5G/6Gという未来の通信インフラ構築に向けた、日本とシンガポールの強固な協力関係を象徴するものでした。NICTとSUTDのパートナーシップが、両国のみならず、世界の持続可能な発展に貢献するイノベーションを生み出していくことを、心から期待しております。
最後になりましたが、温かく迎えてくださったトニー・クエック教授をはじめとするSUTDの皆様、そしてこの素晴らしい連携を推進されるNICTの徳田理事長はじめ関係者の皆様に、改めて感謝申し上げます。
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