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出生率の本当の課題は「結婚の減少」にある

~既婚者の出生数は大きく変わっていない~


少子化が進む日本社会において、「若者が子どもを産まなくなった」といった印象を持つ方は少なくないでしょう。


確かに、2023年の合計特殊出生率(TFR)は1.20と、過去最低に近い水準まで落ち込んでおり、年間の出生数も70万人台に突入しています。これは戦後すぐのベビーブーム期と比べて半分以下です。


ですが、この「少子化」の原因は、本当に「子どもを産まなくなったから」なのでしょうか?


実は、日本の出生率低下には、もうひとつの重要な要因があります。それが、結婚する人が減っていることです。



この話は私が地元の国政報告会で定期的にご説明をさせていただいておりますが、改めてココに記しますね。



合計特殊出生率(TFR)とは? まずは基本の確認から

日本の少子化を語るとき、最もよく使われる指標が「合計特殊出生率(以降TFR)」です。


これは、15~49歳の女性が1人あたり一生のうちに何人の子どもを産むかを示す統計的な指標です。


しかしTFRは、あくまで「全年齢の女性」全体を分母にしているため、「結婚していない人」も含まれています。つまり、未婚女性が増えれば、それだけTFRは下がるのです。

そこで近年注目されているのが、「既婚女性」に絞った出生率の分析です。



結婚している人の出生力は、実はあまり変わっていない


厚生労働省や国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、結婚した夫婦が最終的に持つ

子どもの平均数(完結出生児数)は、長年ほぼ2人前後で安定しています。


たとえば、国立社会保障・人口問題研究所が2021年に発表した「出生動向基本調査」では、結婚持続期間15~19年の夫婦が持つ子どもの平均は1.90人


これは1970年代から大きくは変わっていません。


つまり、「結婚している人は、昔も今もそれなりに子どもを産んでいる」のです。問題は、「そもそも結婚する人が減っている」ことにあります。



昔と今の「結婚率」の違いが、出生率に直結している


では、どのくらい結婚する人が減っているのでしょうか?


2020年の国勢調査によれば、**50歳時点で一度も結婚したことのない人(=生涯未婚率)は、男性で28.3%、女性で17.8%**と、過去最高を記録しました。1980年時点では、同様の未婚率は男性でわずか2.6%、女性で4.5%程度でしたので、この40年間で未婚化が劇的に進んでいることがわかります。



これは、単に「晩婚化」が進んでいるというだけではありません。そもそも結婚に至らない人が増えているという構造的な変化が起きているのです。



「もし昔のように皆が結婚していたら」仮想シナリオで見えてくること


興味深いのは、政府や研究機関が行っている「もし今でも昔のように9割以上の女性が結婚していたら、出生率はどうなっていたか?」という仮想分析です。


このシミュレーションによると、仮に2020年代の日本で1980年代並みに結婚する人の割合が維持されていた場合、TFRは1.7〜1.8程度にまで回復していた可能性が高いと推定されています。



つまり、結婚さえしていれば、多くの人は今でも2人近くの子どもを持っている。出生率の大きな低下は、「結婚しない人が増えたこと」によって生じているのです。



出生率 = 結婚率 × 既婚者の出生力

人口学的には、出生率(TFR)は以下のように分解できます。


TFR = 結婚している人の割合(有配偶率) × 結婚している人の出生力(有配偶出生率)


このうち、後者(有配偶出生率)は大きく下がっていないどころか、2005年頃には一時的に回復すらしていたとする研究もあります。



むしろTFRが大きく低下しているのは、前者の「結婚する人の割合」が下がっているから。少子化の本質的な課題はここにあるといえます。



なぜ結婚しない人が増えたのか?

未婚化の背景にはさまざまな要因があります。代表的なものをいくつか挙げてみましょう。

  • 経済的な不安(正規雇用の減少、収入の不安定さ)

  • 仕事と家庭の両立の難しさ

  • 「結婚」に対する価値観の変化

  • 出会いの機会の減少(特にコロナ禍以降)

  • 住宅・保育インフラなど生活環境の不安


中でも経済的要因は特に深刻です。とりわけ男性の非正規雇用率が上がっていることや、年収300万円未満の層で結婚率が極端に低いことは、各種調査でも明らかになっています。



結婚後の「第2子以降」の壁も新たな課題に

また、近年では「第1子は持つが、2人目以降をためらう」夫婦も増えており、いわゆる「二人目の壁」も新たな課題となっています。

背景には、以下のような不安があります:

  • 教育費・住宅費の高騰

  • 長時間労働と育児の両立困難

  • 育休や時短勤務が実質的に取りづらい職場文化

  • 高齢出産による健康リスク


これにより、結婚していても子どもを1人しか持たない夫婦の割合が増加しています。

少子化対策は「未婚対策」と「育児支援」の二正面から


こうした現状を踏まえると、今後の少子化対策は大きく2つの軸で進めていく必要があります。

  1. 未婚・晩婚の解消(=結婚の希望実現)

    • 出会いの機会支援(婚活・マッチング)

    • 若年層の雇用・住宅支援

    • 結婚・出産に前向きになれる社会環境づくり


  2. 結婚後の出産・育児支援(=子どもを持つ希望の実現)

    • 保育の無償化・待機児童解消

    • 働き方改革(育休・時短勤務の取得促進)

    • 教育費・住居費の負担軽減


出生率だけを上げようとしても限界があります。


「結婚したくてもできない人」「2人目以降を望めない人」を支えることで、ようやく社会全体の流れを変えることができるのです。



特に私はコロナ禍で激減した「出会い」の創出のために、あんしん・あんぜんに利用できる結婚支援アプリの普及に力を入れてまいりました。


その甲斐あって、かつて選挙区外ですが桑名市が結婚支援マッチングアプリを積極的に活用したいということだったので、当時こども家庭庁の小倉 將信大臣にともに要望活動をしたことがあります。




その様子を見て、三重県一見 勝之知事も!




まとめ:問題の本質を見誤らないことが重要



少子化問題を語る際、「若者が子どもを産まなくなった」と一括りにしてしまうのは危険です。データを丁寧に見ていくと、結婚した人は今でも子どもを持っていることがわかります。



本当の課題は、「結婚に至らない人」が増えていること、そして「2人目以降の出産が難しくなっていること」です。


だからこそ、政治も社会も、表層的な出生数の数字だけではなく、その背後にある“結婚”や“家族形成”の現実に目を向けていく必要があるのです。

 
 
 

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