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日本農業の未来を決める重要な議論がスタート


~農業構造転換推進委員会キックオフ会議に参加して~

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歴史的転換点に立つ日本農業


2025年9月11日、自由民主党本部で開催された「農業構造転換推進委員会」のキックオフ会議に参加してまいりました。江藤拓委員長のもと、日本農業が直面する構造的課題に正面から向き合うこの委員会は、まさに歴史的な転換点における重要な取り組みです。


森山食料安全保障強化本部長が冒頭で述べられた「日本の農業は今、変わっていかなければ大変なことになる」という言葉に、私自身も深い危機感を改めて持ちました。特に米の状況は深刻で、1キロ341円という高い関税があるにもかかわらず、これを飛び越えて米の輸入が大幅に増加している現実があります。



委員会の進め方と検討体制


今回の構造転換推進委員会では、短期対策と中長期対策を明確に分けて議論を進めるとせつめいがありました。短期対策については、現場の農業者の来年度営農計画に影響することから、速やかに議論を開始します。特に重要なのは、統計調査の精度向上や民間在庫量のより詳細な把握など、適切な政策立案の基礎となるエビデンスの確保です。


中長期対策については、令和9年度の水田政策見直しに向けて、10月から本格的な議論を開始する予定です。検討項目が多岐にわたることから、第1分科会では水田政策の方向性や備蓄のあり方、第2分科会では生産性向上や需要拡大について、それぞれ専門的な検討を進めることとなります。



三重県の視点から見た私の問題提起

会議では、私から大きく2つの論点を提起させていただきました。


1. 短期対策について、配布された資料には「把握」という文字が並んでおり、統計的なデータ収集に重点が置かれているように見えました。しかし、データを把握した後の具体的な政策への落とし込みが見えにくいという点を指摘しました。把握することは重要ですが、それが農業者にとって意味のある政策につながらなければ、現場の期待に応えることはできません。


2-①.中長期対策において「食育」の位置づけを明確にすべきだと提案しました。北川会長(全国農協青年組織協議会)からも「国民の食と農に対する理解を深める」重要性が指摘されましたが、これは単に担い手確保のためだけではありません。(余談ですが北川会長は伊賀市の若手農家さんで私の友人です。)

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消費者と生産者の意識の乖離、つまり「安ければいい」という消費者意識と農業者の苦労との間にある溝を埋めるためには、教育を通じた国民意識の変革が不可欠です。


2-②. 高校教育無償化と農業教育の課題

地方が抱える深刻な課題として、高校教育無償化により人材が大都市に流れ、農業高校の存続自体が危ぶまれている現状があります。三重県でも、この問題は切実です。農業の未来を担う若い人材を育成するためには、農林水産省だけでなく、文部科学省との連携が不可欠です。農業高校における教育内容も、従来の技術教育だけでなく、経営感覚を持った人材育成が重要です。現代の農業者は単なる生産者ではなく、経営者としてのアントレプレナーシップが求められる時代だからです。



関係団体からの切実な声

会議では、JA全中の山野会長、全国農業会議所の国井会長、全国土地改良事業団体連合会の北村副会長、そして全国農協青年組織協議会の北川会長と井口理事から、それぞれの立場での課題と要望をお聞きしました。


特に印象深かったのは、若手農業者を代表する北川会長の「これまでの経営努力を水の泡にしないでほしい」という切実な訴えです。米価低迷期においても、コストダウンや集約化に取り組んできた若手農業者の努力が、今後の政策変更によって無駄にならないよう、中長期的な視点での政策設計が必要だという指摘は、まさに核心を突いています。井口理事からは水田農業の現場の実情について詳細な報告がありました。


米価上昇により増産傾向にある一方で、麦・大豆の作付面積減少により畜産業者が困惑している現状、さらに令和9年からの生産調整制度変更への不安など、現場が直面する複雑な課題が浮き彫りになりました。



私が感じた重要な論点

この会議を通じて、いくつかの重要な論点が明確になりました。データに基づく政策立案の必要性については、農林水産省の統計調査における課題を踏まえ、より正確で実用的な情報収集システムの構築が急務です。特に民間事業者の届出制度については、現在わずか19%しか報告されていないという現実を踏まえ、法制度の抜本的見直しが必要でしょう。需要と供給のバランス調整については、単純な増産ではなく「需要に応じた生産」という基本原則の徹底が重要です。米価が上昇したからといって無制限に増産すれば、必ず価格暴落という結果を招きます。農業者にとっても消費者にとっても望ましくない「ジェットコースター」のような価格変動を避けるためには、精密な需給調整が不可欠です。セーフティネットの充実については、多くの議員から指摘がありましたが、現行制度が実際の農業者のニーズに十分応えられていない現状があります。収入保険制度の要件緩和や、品目別収入保険の導入検討など、より実効性のある支援策の構築が求められています。



地域の実情を踏まえた政策設計

三重県の農業現場を回る中で常に感じるのは、地域によって抱える課題が大きく異なるということです。平野部の大規模農業と中山間地域の小規模農業では、必要な支援策が全く違います。機械導入支援についても現在の制度では、物価上昇に補助金額が追いついておらず、従来なら購入できた機械が買えなくなっているという声を多く聞きます。また、地方自治体が独自に上乗せ支援をしても、国の補助金からその分が控除されるという仕組みも、地方の創意工夫を阻害する要因になっています。



今後の展望と私の取り組み

江藤委員長が表明された「政治家として、これまでにない緊張感を感じている」という言葉は、私も同じ思いです。この構造転換の成否が、日本農業の未来を左右するからです。年内の中間報告に向けて、分科会での専門的な検討と委員会での幅広い議論を並行して進めていくことになります。私としては、特に以下の点について積極的に提言してまいります。文部科学省との連携強化による農業教育の充実、地域の実情に応じたきめ細かな支援策の構築、データに基づく実効性のある政策立案システムの確立、そして何より、農業者が将来に希望を持って営農に取り組める環境の整備です。



皆様にお伝えしたいこと

この農業構造転換は、農業者だけの問題ではありません。食料安全保障という国家の根幹に関わる問題であり、すべての国民に関係する課題です。現在の米価上昇により、消費者の皆様にはご負担をおかけしていることは承知しています。しかし、これまで長期間にわたって生産コスト割れの状況に耐えてきた農業者の努力があったからこそ、日本の食卓が支えられてきたということも、ぜひご理解いただきたいと思います。適正な価格での安定供給を実現するためには、生産性向上と構造転換が不可欠です。そのための政策投資は、決して農業者だけのためのものではなく、国民全体の食料安全保障のための投資なのです。



おわりに

この委員会での議論は、日本農業の未来を決める重要な分岐点です。現場の声をしっかりと政策に反映させ、農業者が希望を持って取り組める環境を整備するとともに、国民の皆様の食料安全保障を確実なものとするため、全力で取り組んでまいります。三重県の農業者の皆様をはじめ、多くの関係者の皆様からのご意見をいただきながら、実効性のある政策提言を行ってまいります。引き続き、皆様のご指導とご協力をよろしくお願いいたします。

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