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北海道大学で日本の農業の未来を視察 — スマート農業が切り拓く、新たな可能性

こんにちは。川崎ひでとです。


先日、総務大臣政務官として、日本の食料安全保障と地域活性化の鍵を握る最先端の取り組みを視察するため、北海道大学の「スマート農業教育研究センター」を訪問いたしました。北海道大学大学院農学研究院の野口伸教授にご案内いただき、日本の農業が直面する課題と、それを乗り越えるためのデジタル技術の驚くべき可能性を目の当たりにしました。


日本の農業が直面する深刻な課題と「スマート農業」という解決策


ご存知の通り、日本の農業は、従事者の高齢化と深刻な労働力不足という大きな課題に直面しています。このままでは、豊かな食を支えてきた私たちの農地が失われかねません。この課題に対し、政府は「Society 5.0」の実現を掲げ、AIやIoT、ロボット技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れることを推進しています。



その中でも、特に大きな変革が期待されるのが「スマート農業」の分野です。これは、ロボットやドローンといった「フィジカル空間」の技術と、AIによるデータ解析やシミュレーションといった「サイバー空間」の技術を融合させ、これまでの経験と勘に頼る農業から、データに基づいた超省力・高品質な農業へと進化させる取り組みです。



百聞は一見に如かず — 遠隔操作される無人トラクター


視察では、まさに未来の農業を体現する光景が広がっていました。札幌市にある北海道大学のキャンパス内の監視室から、圃場にいる2台の無人トラクターを学生の方が遠隔で監視・操作するデモンストレーションです。


モニターには、トラクターに搭載されたカメラからの高精細な映像がリアルタイムで映し出され、まるで運転席にいるかのような臨場感です。学生の方がスイッチを入れると、2台のトラクターが静かに、そして正確に動き始めました。

特に印象的だったのは、AIによる安全確保の仕組みです。人がトラクターの前に立つと、AIが瞬時に障害物として検知し、自動で緊急停止しました。これならば、監視するオペレーターが一人でも、安全に複数の機械を管理できます。この技術を使えば、札幌から約37km離れた岩見沢市や、さらには1200km以上離れた高知県の農地でさえ、遠隔で作業を行う実証に成功しているというお話に、距離の制約を超えた新しい農業の形を実感しました。



新しい農業の担い手「サービス事業者」という考え方


ここで野口教授から、非常に重要な視点を伺いました。「これほど高価な機械を、個々の農家が導入するのは難しいのではないか?」という問いに対し、教授は「これらの技術の主な担い手は、個々の農家ではなく、農作業を請け負う『サービス事業者』です」と答えられました。



昨年改正された食料・農業・農村基本法でも、こうしたサービス事業者の活動を促進することが盛り込まれています。農家の方々は、大変な作業をサービス事業者に委託することで、自らは経営やマーケティング、付加価値の高い作物への挑戦など、より創造的な活動に時間を使うことができます。これにより労働時間は69%も削減され、生産コストの減少にも繋がるとのことです。まさに「儲かる農業」への転換です。



通信インフラの重要性と総務省の役割

このスマート農業の実現に不可欠なのが、大容量の映像データを低遅延で安定して送受信できる通信インフラです。今回の実証実験でも、NTT東日本が提供するローカル5Gの基地局が活用されていました。



私たち総務省は、こうした次世代の通信インフラを、都市部だけでなく、条件不利地域と言われる中山間地域も含めて全国に整備することを使命としています。日本の農地の約4割は中山間地域にあります。これらの地域にこそ、スマート農業のような技術を届けることで、耕作放棄地の解消や、災害に強い地域づくりに貢献できると確信しています。



デジタルツインから先端半導体まで — さらなる未来へ

視察では、さらに未来を見据えた研究も紹介されました。現実の圃場を寸分違わぬ精度でサイバー空間に再現する「デジタルツイン(バーチャル農場)」技術です。これにより、実際に機械を動かす前に、オフィスで最適な作業計画をシミュレーションし、効率を最大化することができます。



また、北海道で国策として進む次世代半導体製造拠点「Rapidus」との連携も視野に入れられています。先端半導体を用いることで、例えばワイン用ブドウの糖度や酸度を瞬時に非接触で測定し、最高の品質の房だけをロボットが収穫するといった、まさに人間を超える農業が実現するかもしれません。


今回の視察を通じて、日本の農業が持つ大きな潜在能力と、デジタル技術がそれを解き放つ鍵であることを再認識しました。総務省として、スマート農業をはじめとする日本のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を強力に推進し、全国どこにいても質の高い生活と仕事ができる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、全力で取り組んでまいります。

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