top of page

フランス発・自動運転の未来を牽引するNavya社を視察 ― 日本市場そして四日市への期待

皆様、こんにちは。


先日のOECD閣僚理事会出席のためのフランス・パリ出張の機会に、自動運転シャトルの開発で世界をリードする「Navya(ナビヤ)」社を訪問し、その技術開発の最前線を視察してまいりました。Navya社の自動運転バスは、私の地元である三重県四日市市で進められている未来のまちづくりプロジェクトにおいても、中心的な役割を担っています。


今回は、その先進的な取り組みと、日本市場への強い期待についてご報告いたします。


世界32カ国で実績を重ねる自動運転のパイオニア


Navya社は、設立から約10年の歴史を持つ、フランスを拠点とする自動運転ソリューションのプロバイダーです。これまでに世界32カ国で230台以上の自動運転シャトルを展開し、総走行距離は100万kmを超えるなど、この分野における豊富な経験と実績を誇ります。


同社の最大の強みは、自動運転の根幹をなすソフトウェア「Navya Driver」を全て自社で開発している点です。それに加え、センサーなどのハードウェアの選定、さらにはシャトルバスの車両自体の製造までを一貫して手掛けています。これにより、プロジェクトの企画段階から、導入後のメンテナンス、遠隔監視システムの提供に至るまで、包括的なソリューションを提供できる体制を構築しています。


視察では、同社がターゲットとする3つの市場についての説明がありました。


  1. 私有地での運用:大規模な工場や大学キャンパス内など、管理されたエリアでの人員輸送。

  2. ラストマイル輸送:鉄道駅と最終目的地を結ぶなど、公共交通が手薄な郊外や地方での活用。

  3. 都市中心部での運用:自動車の乗り入れが制限されるエリアでの、環境に優しい新たな交通手段としての活用。


これらの多様なニーズに一つの車両プラットフォームで柔軟に対応し、世界中で着実に実績を積み重ねていることに、同社の技術力とビジネスモデルの確かさを感じました。


日本市場への強いコミットメント ― 横浜に日本支社設立へ


今回の視察で最も印象的だったのは、Navya社の日本市場に対する並々ならぬ期待とコミットメントです。同社は日本を「大きな市場(the big market)」と明確に位置づけており、その言葉を裏付けるように、今年(2025年)末までに、現在シンガポールにあるアジアの拠点を移転する形で、横浜に日本支社「Navya Japan」を設立する計画であることを明かしてくれました!


日本支社設立の背景には、日本での急速な事業拡大があります。今年度だけで、全国約50か所でNavya社のシャトルを用いた実証実験が予定されており、すでに6か所では定常的な運行サービスが開始されています。私の地元・四日市市をはじめ、島根県や高知県では総務省の事業として通信の安定性確保や緊急車両検知といった先進的な実証実験も行われています。こうした多くのプロジェクトをきめ細かくサポートし、顧客に近い場所で万全の体制を築くことが、日本支社設立の大きな目的です。



また、Navya社の株主には、日本のマクニカ社やNTTグループも名を連ねています。特にマクニカ社は、日本国内でのメンテナンスや運用サポートを担う重要なパートナーであり、この強力な連携体制が、Navya社の日本での成功を後押ししていることは間違いありません。




未来の社会を支える技術の最前線


社内を案内いただきながら、自動運転を支える具体的な技術についても詳しくお話を伺いました。



V2X通信と国際標準化の課題


特に私の関心を引いたのは、車両とインフラが通信を取り合う「V2X(Vehicle to Everything)」技術です。例えば、信号機から「あと何秒で赤に変わる」という情報を車両が直接受信できれば、急ブレーキをかけることなく、よりスムーズで安全な停止が可能になります。


しかし、ここで課題となるのが周波数帯です。現在、世界ではV2X通信に特定の周波数帯(5.9GHz帯など)を利用するのが標準となりつつありますが、日本ではその周波数帯が放送の用途で使われている場合があります。この課題を解決するため、日本では現在、国土交通省、警察庁、そして私が所属する総務省の三省庁合同で、自動運転の実現に向けた環境整備の研究会が立ち上げられています。


日本の優れた自動車産業が世界で勝ち抜いていくためにも、こうしたインフラの国際標準化に向けた取り組みを、政府として強力に推進していく必要があると改めて感じました。


レベル4の核となる「遠隔監視システム」


次に、運転手が乗車しない「レベル4」自動運転の実現に不可欠な「遠隔監視システム」のデモンストレーションを拝見しました。(モニターでしたけど)オーストリアで実際に走行している車両のデータが、リアルタイムでパリのオフィスに送られてくる様子を見せていただきました。


画面上には、車両の正確な位置や速度、バッテリー残量はもちろん、設置された複数のカメラを通じて、車内外の様子が鮮明に映し出されます。ただ監視するだけでなく、乗客との音声通話や、ドアの開閉、発進指示といった基本的な遠隔操作も可能だといいます。


Navya社が目指しているのは、1人のオペレーターが5台から10台の車両を同時に監視する体制です。これが実現すれば、深刻化するドライバー不足という社会課題に対する、極めて有効な解決策となり得ます。


ユニバーサルデザインへの配慮


最後に、バリアフリーへの対応について質問したところ、こちらも感心させられました。Navya社の新しい車両「Evo 3」には、車椅子利用者のための自動スロープが備わっています。

利用者は、ドア横に設置されたVoIP(IP電話のようなもの)で呼びかけると、遠隔監視センターのオペレーターが状況を判断し、スロープを展開させることができる仕組みです。車両がカメラで自動認識するのではなく、人と人がコミュニケーションをとることで安全を確保するという思想は、テクノロジーとヒューマニティの素晴らしい融合だと感じました。



結びに


今回のNavya社視察は、自動運転技術が、単に移動を便利にするだけでなく、ドライバー不足の解消、交通弱者の支援、そして環境負荷の低減といった、現代社会が抱える多くの課題を解決する巨大なポテンシャルを秘めていることを再確認する、大変有意義な機会となりました。


Navya社の日本市場への強い期待と、横浜への日本支社設立という大きな決断に応えるためにも、私たち政府は、安全基準の整備やインフラの国際標準化といった環境整備をさらに加速させ、日本が自動運転技術の社会実装において、世界のトップランナーとなるべく全力を尽くさなければなりません。


まずは、私の地元・四日市市をはじめ、全国各地で進められているプロジェクトが成功裏に進むことを、心から期待しています。

ご一読いただき、誠にありがとうございました。

 
 
 

Comments


bottom of page