【毎週ヒデトーク】漁業―気候変動と「TAC制度」のジレンマ、政治の現場から
- anymama0274
- 2025年11月19日
- 読了時間: 9分
音声配信はコチラから
この記事は、stand.fmにて配信している
「川崎ひでとの【ひでトーク】」を 生成AIを用いて要約したものです。
また、この放送のMCは
働くママを応援する事業支援サービス「Anymama」さん登録のメンバーの皆さんです。
MCの皆さんとは業務委託という形で、
しっかりお仕事としてご一緒させていただいています。
今週の配信もぜひ聞いて・読んでみてくださいね。
皆さん、こんにちは。衆議院議員の川崎ひでとです。
この収録は10月6日に行っています。
今週も、先週に引き続きゲストMCに「いっちぃ」さんをお迎えしてお送りします。先週は、「なぜ人はディズニーランドに何度も行くのか?」という、私の素朴な疑問から観光政策の未来について考える、非常に面白い議論になりました。
そして今週は、いっちぃさんから、私たちの生活の根幹に関わる、非常に切実なテーマをいただきました。
「この夏の猛暑や、春と秋が短くなっている気候の変動によって、農業や漁業に大きな影響が出ているのが気になります。獲れるはずの野菜や果物が減ったり、逆にこれまで獲れなかった魚が豊漁になったり。食卓にも直結するこの問題に、国としてどう対応していくのでしょうか?」
これは、まさしく今、日本の政治が直面している最大の課題の一つです。特に、いっちぃさんが指摘してくださった「漁業」の問題は、気候変動、資源管理、そして漁業者の皆さんの生活が複雑に絡み合い、一筋縄ではいかない深刻なジレンマを抱えています。
今日は、私が今、深く関わっているこの「漁業問題」の最前線について、特に「TAC(タック)」と呼ばれる資源管理の仕組み 5 を中心に、その理想と現実、そして私たち政治がどう乗り越えようとしているのか、その裏側を詳しくお話ししたいと思います。
獲りすぎれば、いなくなる。資源管理の「理想」
いっちぃさんのご指摘の通り、まず大前提として、魚は「資源」です。海という開かれた場所では、誰もが「獲れる時に、獲れるだけ獲りたい」と思うのが自然な心理です。しかし、その結果、特定の魚を獲り尽くしてしまえば、資源は枯渇し、漁業そのものが成り立たなくなってしまいます。
この「獲りすぎ」を防ぐために、日本がサーモンの養殖などで世界的に有名なノルウェーの仕組みを参考に、数年前から試験的に導入を始めたのが「TAC(タック)」という制度です。
TACとは「Total Allowable Catch(総漁獲可能量)」の略で、非常に簡単に言えば、「この魚は、資源を枯渇させないために、年間でこれだけしか獲ってはいけません」という上限(総量規制)を決める仕組みです。
さらに、その総枠を個々の船、例えば「川崎ひでと丸は年間〇〇トンまで」「いっちー丸は年間〇〇トンまで」と、船ごとに割り当てる方式(IQ:Individual Quota)も導入されています。
現在、私の地元、三重県ではカタクチイワシがこの対象となっています。この制度の最大の狙いは、漁業者の皆さんの「意識改革」を促すことにあります。
「量」から「質」へ。TACが目指した未来
これまでの漁業は、いかに「多く」獲るかという「量」の勝負でした。しかし、船ごとに獲れる上限が「重さ(トン数)」で厳密に決められてしまうと、漁業者の皆さんの考え方が変わります。
「どうせ上限が決まっているなら、小さな魚を大量に獲っても、単価が安くてもったいない。それならば、魚が大きく育つまで待って、一匹あたりの値段が高い、質の良い魚を獲ろう」。
このように、インセンティブ(動機)が「量」から「質」へと転換されるのです。この仕組みが理想通りに機能すれば、
小さな魚は海に残るため、資源が守られる。
漁業者は、少ない匹数でも高い値段で売れるため、収益が安定する。
資源の持続可能性と、漁業経営の安定。この二つを両立させる、まさに「一石二鳥」の仕組みとして、TAC制度は大きな期待を背負ってスタートしました。
制度を揺るがす「想定外」―気候変動という現実
しかし、この「理想的な仕組み」は今、二つの大きな壁に直面しています。その一つが、いっちぃさんが最初に指摘してくださった「気候変動」です。TAC制度は、「例年通りなら、この時期に、この海域で、これくらいの魚が獲れるはず」という過去のデータと予測に基づいて設計されています。しかし、現実はどうでしょうか。
北海道で大量のイワシが打ち上げられたり、逆に、これまで三重県で獲れていた魚が全く獲れなくなったり、海水温の上昇によって、魚の生態系や回遊ルートが、私たちの予測を遥かに超えるスピードで変化してしまっています。
まさに今、東北のサンマ漁で、この問題が起きています。今年のサンマは、非常に脂が乗って大きく育っている。そのため、漁師さんたちは「今がチャンスだ!」と一斉に漁に出ます。その結果、まだシーズン序盤にもかかわらず、あっという間に「TAC」の上限値に達してしまったのです。
「目の前に、高く売れる立派なサンマがいるのに、制度のせいで獲ることができない」
これは、漁業者の皆さんにとって、死活問題です。気候変動という「自然の不確実性」が、厳格な「制度の確実性」と正面から衝突し、現場に大きな混乱を生んでいるのです。
枠(クオータ)の奪い合い―制度が生んだ「新たな火種」
この問題をさらに複雑にしているのが、TACの「枠(クオータ)」を漁業者間で売買・貸し借りできるというルールです。例えば、秋田県の「ひでと丸」が、早々に枠を使い切ってしまったとします。まだ漁を続けたい「ひでと丸」は、枠が残っている三重県の「いっちー丸」に、「ごめん、お前の枠を少し分けてくれないか」と交渉することができます。
一見、合理的に聞こえますが、この制度が現場では全く機能していません。「いっちー丸」からすれば、「11月や12月になって、こっちの海域で大漁になるかもしれない。その時にお前なんかに枠をあげていたら、俺たちが獲れなくなるじゃないか!」と考えるのが当然です。
未来のことは誰にも予測できない。特に自然が相手ならなおさらです。結果として、この制度は、漁業者同士の助け合いではなく、貴重な「枠」をめぐる地域間の疑心暗鬼と対立を生み出す原因になってしまっているのです。
「現場」 対 「霞が関」―なぜ制度は“ズレ”るのか
そして、もう一つの、そして最も根深い壁が、「現場」と「制度設計者(国)」との間に横たわる、深い断絶です。そもそも、船ごとに割り当てられる「枠」の量は、一体誰が、どうやって決めているのか。
国(農林水産省)は、過去の漁獲データに基づいて、「この県はこれくらい獲っているから、資源保護も考えると、上限はこれくらいが妥当だろう」と、数字だけを見てルールを決めてしまいます。
しかし、ここにこそ、最大の“罠”がありました。私の地元、三重県の漁業者の皆さんは、実は国から言われるずっと前から、自主的に資源を守る意識が非常に高く、「来年のために、今年はもうこれ以上獲るのはやめておこう」と、自分たちで総量規制(自主的TAC)を行っていたのです。
しかし、農林水産省はそんな現場の努力を知りません。彼らが見るのは、「三重県はこれしか獲っていない」という“結果の数字”だけです。その低い数字を基準に、国のTACの枠が決められてしまったら、どうなるか。
「俺たちは資源を守るために我慢してきたのに、そのせいで枠を小さくされた!真面目にやってきた者が馬鹿を見るじゃないか!」現場からは、当然、このような怒りの声が上がります。「現場を見ていない人たちに、勝手なルールを決められたくない」。この不信感こそが、日本の漁業政策が抱える最大の問題点なのです。
「声」を届けるための挑戦―小泉進次郎氏とのデジタル改革
では、この深い溝をどう埋めればいいのか。
これまでの政治は、「ピラミッド型」で声を集めてきました。まず、漁業者の皆さんが、地域の「漁業組合」に意見を言う。その組合が「三重県」に意見を上げ、三重県が「農林水産省」に報告する。このプロセスを経るうちに、現場の生々しい「怒り」や「困りごと」はどんどん削ぎ落とされ、霞が関に届く頃には、当たり障りのないスリムな「意見」になってしまっています。
これでは、現場の本当の課題は永遠に解決しません。この状況を打破すべく、実は私と、当時、農林水産大臣になる前の小泉進次郎さんとで、あるプロジェクトを立ち上げました。それは、「デジタルの力で、現場の声を“直接”集めよう」という挑戦です。具体的には、オンライン会議システムや、Googleフォームのようなアンケートツールを使い、全国の漁業者の皆さんから直接、意見や不満を吸い上げる。そして、集まった大量のテキストデータをAIで解析し、課題をパターン分けする。
地域によって獲れる魚も、抱える課題も全く違うのです。それなのに、農林水産省が「一つの政策」で全国をまとめようとすること自体に、そもそも無理がある。だからこそ、このデジタルを使ったボトムアップのアプローチは、絶対に必要だと確信していました。
この取り組みは、実際に多くの意見を集約でき、「これはいけるぞ!」と手応えを感じたのです。
しかし…、まさにその矢先、小泉さんが農林水産大臣に就任し、今度は「米不足問題」という、もう一つの大きな課題への対応に追われることになりました。結果として、私たちが進めていたこの漁業改革のプロジェクトは、残念ながら一時的に「宙ぶらりん」の状態になってしまったのです。
デジタルへの「抵抗感」と、それでも前に進む理由
このプロジェクトを進める中で、私自身が驚いた「意外な壁」もありました。いっちぃさんが「漁業者の皆さんは、ネットに抵抗感なく入ってきてくれるんですか?」と鋭い質問をされましたが、まさにその通りだったのです。私たちは最初、「若い漁業者」ならデジタルに慣れているだろうと高をくくっていました。しかし、実際に話を持ちかけてみると、その若い世代からも、最初は強い抵抗感があったのです。
これは、彼らが高齢だからとか、ITが嫌いだから、という単純な話ではありませんでした。長年、「上(組合や県)が言うことに従う」という文化の中で生きてきた彼らにとって、「自分たちが直接、国に意見を言う」ということ自体が、想像の範囲外だったのです。
ただ、希望もありました。一度、抵抗感を乗り越えて、実際にデジタルツールの便利さや、自分たちの声が直接届くダイナミズムを「体験」してもらうと、彼らの目の色が変わったのです。「こんなに簡単なのか」「これならできる」。その小さな感動が、改革の第一歩になると感じました。もちろん、デジタルが全てではありません。いっちぃさんがおっしゃる通り、最終的には直接会って話す「人の力」が不可欠です。デジタルのスピード感と、アナログの信頼関係。そして、国会議員だけでなく、現場をよく知る県議会議員や市議会議員といった、地域の政治家ともしっかり連携すること。
これからの政治には、その両輪が求められています。
結論として―未来の食卓のために、今、政治がすべきこと
気候変動という、予測不可能な大きなうねりの中で、私たちは今、食料安全保障という国の根幹をどう守っていくのか、という局面に立たされています。
サンマが獲れない、イワシが獲れすぎる。この現実に、既存の制度は追いついていません。
だからこそ、
現場の「生の声」をリアルタイムで吸い上げる「デジタル」の仕組み。
気候変動に対応した「品種改良」や、暑さを防ぐ「施設」への投資。
この両方が必要です。しかし、これらを実行するには、当然ながら「税金(お金)」がかかります。
新しい政権がスタートしましたが、この「未来への投資」と「財源の確保」という重い課題にどう向き合っていくのか。私自身も、党の中で、そして国会で、この「現場の声」を届けるパイプ役として、全力を尽くしてまいります。
いっちぃさん、2週にわたり、本当に重要で、示唆に富むお話をありがとうございました。










コメント